生徒が発表の瞬間、俯き加減になってしまう原因の一つに、目の前に見えた景色に驚き、緊張度が高まってしまうという事が考えられます。「練習中は、しっかりやれていた。なのに本番になったら、からっきしダメだった。」そんな経験がある方もいるのではないでしょうか。

 

練習時に、聴衆を具体的にイメージ出来ていないと、人前に出た瞬間に下を向いてしまいます。皆がこちらを見ている、と感じたり、想像以上に人数がいると感じてしまう事で、一気にあがってしまうのです。予想外の出来事が起きた時、「え?どうしよう」とパニックになるのと同じ状態です。

 

どんな部屋、何人で、どんな距離感で

これを回避するためには、自宅で練習をする時に、本番はどんな部屋で、何人ぐらいの聴衆がいて、聴衆との物理的な距離感や、心理的な距離感はどんな感じなのかを、しっかりとイメージしながら練習をします。

そしてそのイメージに合わせて、登壇するところから降壇するまで、練習を行います。その時に、目線の高さ、動かし方、歩くスピード、歩き出すタイミング、話し出すまでの間、なども想像していきます。

私の教え子のTちゃんは、照れ屋さん。名前を呼ばれてから壇上までの数メートルの距離で緊張がMAXになってしまい、第一声を発するまで目は泳ぎ、名前を言う声も小さく、見ているこちらまで緊張してしまうとう状態でした。

彼女は、家でしっかりと練習をしているが故に、本番で縮こまってしまう自分に嫌気がさしています。ですので彼女には、「登壇までの道のりをしっかりとイメージして練習してごらん」とアドバイスをしました。

まずは教室から思い出し、この席にはSちゃんが座ってるね。Kちゃんはいつも興味津々で発表者を見てるよね。目が合う率が高いね。など、歩きながらイメージをしていきます。

 

 

「未知」を「知っている」に変えていく

人は、未知の世界に不安を感じます。生き延びるため、危険を感じると自己防衛反応が出るからです。Tちゃんのように、見慣れていない景色に驚いてしまうタイプの人は、自己防衛反応をなるべく薄めてあげるようにします。知っている世界であれば、心配事が少なくて済むからです。

自己防衛が働けば働くほど、「やりたくない」「見てほしくない」と言う気持ちが強くなり、ますます人前で下を向きたくなってしまいます。そして下を向けば向くほど「また下向いちゃったよ、恥ずかしい」と言う気持ちが強まり、負のループに入り込むのです。

人前が得意な人は、この自己防衛反応が薄く、人前で話すことを「特別なこと」とは思っていません。すぐにこの感覚になれる訳ではありませんが、イメージトレーニングをすることで、少しでも「人前は特別」という感覚を減らしていくことが大切です。