子供達に、スピーチレッスンをする際、先生に一番気にかけて頂きたいのは、「スピーチの練習をするよ」というニュアンスを出さない事です。
大人の私たちでさえ、スピーチの練習をするよ、と言われたらまず身構えますよね。
一度身構えてしまうと、閉じた心を開いていくことが必要となります。
すると、余計に授業時間を増やさなくてはならず、教員の負担にもなりかねません。
スピーチの練習ではなく、レクリエーションとしてワークを取り入れる
大切なのは、「実はこれは、スピーチの練習なんだよ〜」ということを最後に伝えることです。
例えば、こんな練習方法があります。
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まず、2〜3人のグループを作ります。
小さく切った紙を用意し、
・頭を触って
・その場で1回飛んで
・くるっと回って
など指示を書き、くじ引きのように箱の中に詰めます。
簡単な音読課題を用意し、グループの中の一人が音読を始めます。
音読をしていない人は、くじ引きをするように、指示を書いた紙を1枚ずつ取り出し、音読者に向かって
「その場で1回飛んで」
と、指示を出します。
音読者は、指示が出たら音読を止めずに指示通りに体を動かします。
それぞれ2〜3分行ったらおしまいです。
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(イラスト版人前で話すこつ P48参照)
最初は戸惑って、音読を止めてしまったり、指示を聞き取ることができなかったりしますが、次第に慣れてきます。
一見、変な練習だなぁ、と思いますが、これは
・本番での、いつもと違った雰囲気や動きに対してのパニックを防ぐ
・喋りながらアイコンタクトをとる、といった余裕を持てるようになる
・動揺して失敗しても、修正・立て直しをする力をつける
といった効果があります。
やっている本人たちは、
「できた〜!」
「だんだん上手になってきた!」
「もう余裕だよ〜!」
と自信が出てきます。
実際にこの練習を行うと、普段、人前でなかなか声が出せない子も、しっかりとした声で音読出来ているのです。(しかも気がつかぬ間に!)
お友達が失敗してしまった時の、声かけも上手になってきます。
「もう一回やってみようよ!」
「大丈夫だよ、できるよ!」
「惜しかったね〜!」
そして、間違えることへのハードルも低くなります。
上手くやろうとするから、失敗への恐怖心がより強まる
しかしこれを、事前に「スピーチの練習だよ」と伝えてしまっていたら、どうでしょうか。
きっと、
「つっかえないように読まなくちゃ」
「間違っちゃいけないな」
「上手くやらなきゃ」
と身構えるはずです。(大人でもそう思いますよね。)
上手くやらなきゃ、という思いがプレッシャーとなり、失敗に対する恐怖心を煽ってしまいます。レクリエーションとしてワークを行おうとしても、子供達が「練習なんだ」と思っていては、思い切りやることが出来ないですよね。
「授業の前に、ちょっと遊ぼっか!」というだけで、子供達は喜び、リラックスしてワークに取り組めます。楽しみながら、知らぬ間に練習が出来てしまうのです。
練習を終えたら、ちゃんと答え合わせをしてあげる。
この練習を、ただの遊びとして子供達に認識させてしまってはいけません。
終了後にちゃんと、
「今の面白い音読はね、実はスピーチの練習に繋がっているんだよ。一番最初に、頭触って〜と言われた時は、緊張したり、動揺したりしなかったかな?でも、それを立て直そうとしていたよね。この、立て直そうとする力が、人前で話すことではとっても大事なんだよ。」
と伝えてあげます。
すると、今やった面白い音読は、ちゃんと意味があったんだ、と子供達の頭にもインプットされていきます。さらに、
「今の練習でさ、自分の声やお友達の声が、どんどん大きくなっているの、気が付いてたかな?」
と問いかけます。「そうか、確かに!」と感じる子供もいるでしょう。すると、より一層、ワークへの理解が深まると同時に、自分もちゃんと声が出るんだ、と自信にも繋げることが出来るようになるのです。
スピーチの練習は、「心理的ハードルを下げる→楽しむ→理解する」の順番が望ましい
日本人にとって、人前で話すことは、やはり心理的ハードルが高いものです。
最近の小・中・高校では、多くの学校でHRなどを利用し、1分間スピーチなどの取り組みをなさっていると聞きます。
しかし、指導者が「やってはいるけど、どうやって子供達のスピーチ力を伸ばしたら良いのかがわからない。」と悩んでいらっしゃるとも聞きます。
まずは大きなハードルを課さずに、2〜3人のグループ内での恥ずかしさを無くし、その後5〜6人のグループで行い、10人、20人…と人数を増やしていけばいいのです。
大切なのは、たった2つだけ。
・大人たちが自分の理想を押し付けないこと。
・100人中100人が人前が得意でなければいけない、という概念を捨てること
です。
これを前提として、楽しみながら、レッスンを行なってください。
そしてぜひ、先生方同士でまずは、試してみてください。
新しい発見があるはずです。